転職活動を行う上で、企業から内定をもらうことはゴールだといえます。
これから新しい会社での仕事が始まるのですが、ひとまず内定をもらえたら安心することができますよね。
でも、内定をもらえたからといって、それで終わりではありません。
企業から内定を受けた後に取り消しをされたり、入社後に解雇になってしまうケースが少なからずあるようです。
自分に非があるなら仕方ないかもしれませんが、中には企業の一方的な理由で取消されることもあるので注意しなくてはいけません。
ここでは、転職で内定取り消しになる理由と対処法について紹介します。
目次
内定をもらっただけでも雇用契約は成立している
企業から内定を出されて応募者が承諾した時点で、雇用契約が成立したとみなされます。
なので、内定後に取り消しをするということは、法律上は「解雇」に相当すると考えられるわけですね。
企業からすると解雇は自由にできることではなく、「正当な理由」が無ければ行えないことになっています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用:労働基準法 第16条
内定取り消しが正当ではないと判断されれば、その取り消しを撤回させることができます。
もしくは、慰謝料や損害賠償を請求することも可能ですね。
泣き寝入りする必要はありませんから、不当な企業からの取り消しに対しては毅然とした対応を行ってください。
内定を取り消されると無職になるリスクもある
一般的には、転職活動は在職中に行う人が多いです。
仕事をしながら活動を行って、新しい会社が決まってから辞めるというパターンですね。
なので、企業から内定をもらったら、退職手続きを始めるわけです。
スムーズに退職して転職先に入社できるのが理想なのですが、内定を取り消されるとそういうわけにもいきません。
退職後に無職になってしまうので、生活することができなくなります。
これだと笑えない状況ですし、仕方ないでは済まされないでしょう。
正当な理由のない内定取り消しは不当解雇と同じですから、しかるべき対応を取らなくてはいけません。
内定者に落ち度がない場合には、取り消しの撤回を要求することができます。
自分の人生が掛かっていることですから、企業側の言いなりになるのではなく闘うようにしましょう。
自分に非があると内定が取り消しになることがある
企業から一方的に内定の取り消しを告げられても、それは内定者に問題があるのかもしれません。
相応の理由があれば、企業は内定の取り消しをすることができます。
自分でも自覚がないうちに、取り消し事由になるような行動をしている可能性もあるでしょう。
具体的には、以下のような場合が該当します。
経歴を詐称した場合
応募書類や面接での受け答えの中に、虚偽の内容があると経歴詐称になる可能性があります。
たとえば、転職回数を少なく申告したり、持っていない資格を保有していることにしたり、未経験なのに経験者だと偽るといった場合ですね。
入社した後であっても、経歴詐称が発覚すると解雇になることもあります。
自分の経歴を偽るというのは、労働契約法違反となってしまい、悪質なら損害賠償を請求されるかもしれません。
それくらい重大なペナルティなので、絶対にやらないようにしてください。
素行不良によるもの
面接では好印象だったとしても、内定後に素行の悪さが目立つことがあります。
採用担当者に対して失礼な態度を取ったり、研修期間中に無断欠勤や遅刻を繰り返すといったことです。
一般的な社会人として問題があるようなら、不適格だとみなされて内定を取り消されることがあるでしょう。
特に注意したいのが、SNSなどによる炎上や情報漏えいについてですね。
TwitterやFacebookに不適切な内容を投稿して炎上すると、それが転職先の目に入るかもしれません。
または、面接を受けた時の情報をネットに書き込んだことで、情報漏えいだとみなされることもあります。
コンプライアンスに厳しい企業は多いため、ネット上での言動が知られてしまうことも増えているようです。
稀なケースですが、内定後に犯罪歴が発覚して取り消しになったという例もありますね。
面接中に犯罪歴について聞かれることは無いので、前科があっても黙っている人が多いでしょう。
でも、後で問題になることがありますから、事前に伝えておいた方が良いかもしれません。
健康状態に問題がある場合
何かの持病を持っており、業務に支障があると判断されると、内定を取り消されることがありますね。
病気を隠して転職活動をしていて内定後にバレたり、入社後の健康診断で問題が発覚するケースなどが考えられるでしょう。
会社としては、入社してすぐに長期休養などをされると非常に困ります。
中途採用では即戦力が求められるため、健康状態に問題があって満足に働けないのでは話になりません。
特に、精神疾患などは完治したかどうかの判断が難しく、再発する可能性も高いので十分に注意してください。
病気があって不安な人は、医師の診断書を会社に提出することが望ましいです。
内定後に妊娠が分かった場合
女性に限定したことですが、妊娠が発覚すると内定取り消しになることがあります。
妊娠すると産休や育休が必要になるため、入社して早々に休まれると戦力として使えないからですね。
それだったら別の人間を採用したいと考えて、内定を取り消しにする企業は多いでしょう。
自分でも気づかないなら仕方ないかもしれませんが、妊娠していることを隠して転職活動をするのは厳禁です。
転職先の入社日に対応できない
現在の職場の退職に手間取ることで、転職先が指定した入社日に間に合わないことがあります。
数週間なら待ってもらえることが多いですが、1ヶ月以上になると内定を取り消されることが多いでしょう。
通常、内定が出ると転職先と話し合って入社日を決定します。
引き継ぎなどの期間を考慮してくれるので、1~2ヶ月くらいの猶予を持ってくれるはずです。
その期間を過ぎてしまうと、スケジュール管理が甘い人間だと思われるので、かなり印象は悪くなると思います。
なので、転職先の入社日に合わせるために、退職までの手続きはスムーズに行わなくてはいけません。
会社側の一方的な都合で内定取り消しになることも
自分に全くの非が無くても、会社の都合だけで内定が取り消しになることがあります。
先述したように、企業が内定の取り消しをするためには、「正当な理由」が絶対に必要です。
企業側の都合では正当だとはみなされないので、不当な要求をされたときには可能な限り抵抗しましょう。
会社の業績が悪化した
新卒採用ではよくあることですが、急に業績が悪化したことを理由に内定を取り消されることがあります。
既存社員を解雇にするよりは、入社前の人材を切り捨てようという判断ですね。
ただ、中途採用では内定から入社まで1~2ヶ月なので、その期間で業績が悪化することは少ないでしょう。
新卒だと1年以上の期間があったりするので、リスクが大きくなりますね。
会社の業績は内定者とは無関係ですから、取り消しは無効になる可能性が高いです。
内定後に上司からのNGが出た
採用担当者が内定を出した後に、その上司の判断で取消されるパターンです。
通常は、採用担当者が決裁を持っているのですが、中小企業だと社長や幹部の一存で却下されてしまうことがあります。
または、思った以上に応募者が集まらなくて、念のために内定を出しておくというケースですね。
基準に満たなくても内定にしていることがあり、後で再考した時に不採用にされてしまったりします。
大企業なら問題ありませんが、知名度の薄い中小企業の場合には注意してください。
他の応募者の方が魅力的に見えた
企業の採用面接では、良い人材がいたら即座に内定を出していく場合と、全員の面接が終わってから選考を行う場合の2つのパターンがあります。
前者であった場合、すべての採用枠が埋まってから、魅力的な人材が出てくることがあるんです。
そうすると、1つの枠を空けないといけないので、すでに内定を出した人を切り捨てなくてはいけません。
内定者の中で比較をして、最もランクが下の人が取り消されてしまうでしょう。
転職での選考は相対評価ですから、周りとの差別化ができていないと比較されたときに負けてしまうことがありますね。
内定の取り消しにあった時の対処法
内定が出たという証拠を残しておく
一方的に内定を取り消されたとしても、内定が出たという証拠が無ければどうしようもありません。
企業側から「内定を出した覚えはない」と言われてしまったら、裁判をしたとしても水掛け論になってしまいます。
なので、客観的な内定の証拠を残しておきましょう。
内定通知の書面があれば保管しておくべきですし、電話や口頭で内定を告げられたらお礼のメールを送っておいてください。
「内定を頂きありがとうございました」といった内容のメールを人事部に送っていれば、送信日や宛先などが残るので重要な証拠となります。
言った言わないの争いを避けるためにも、何かしらの形に残しておくといったことが大切ですね。
自分から内定辞退は口にしない
企業によっては、内定者から自主的に辞退するように誘導してくる場合があります。
企業側から取り消しにするのは違法だと分かっているから、内定者の方から辞退させようとしてくる悪質なパターンですね。
自分に何の非も無いのであれば、辞退する必要はありません。
内定をもらった時点で雇用契約は成立しているので、入社する権利があるからです。
「辞退しなくてはならない理由は何ですか?」と質問したり、「検討させていただきます」などと言って時間を稼ぐようにしましょう。
その間に専門家に相談することで、何かしらの解決策を模索してください。
その場で答えを出そうとすると丸め込まれるので、即答はせずに保留して時間を稼ぐようにします。
専門家に相談する
企業に対して自分一人で抵抗するのは、かなり難しいと思います。
向こうは素人だと思って舐めていますから、こちらが正当な主張をしても認めることは無いでしょう。
なので、労働問題の専門家に相談することをおススメします。
法律の観点からのアドバイスが受けられるので、会社の一方的な都合での内定取り消しなら解決できる可能性が高いです。
まず最初に、労働基準監督署や労働相談センターなどの行政機関に相談をしましょう。
無料で相談できますから、不当な取り消しなのかの判断を仰ぐことができます。
それでも解決できないときは、弁護士に依頼して裁判をすることになるでしょう。
内定取り消しが無効になった判例はたくさんあるので、労働問題に強い弁護士なら解決してくれるはずです。
ただ、裁判で勝ったとしても、その会社で働くのは気まずくなりますよね。
慰謝料を受け取ってから、また転職活動をやり直すという選択が最も現実的かもしれません。
以上、転職で内定取り消しになったときの対処法を紹介しました。
自分は悪くないのに急に内定が取り消されたら、すごく悔しいですよね。
そういった時は、泣き寝入りするのではなく、専門機関に相談して解決の糸口を見つけるようにしてください。